皆さんこんにちは.マリンです.
先日,四力の触りにおすすめな問題集を紹介いたしました.院試の勉強というものはなかなかとっつきにくいものですが,今回はその数学編です.
四力と同様に院試数学の試験範囲も莫大であり,何から手を付けたらいいのやらわかんない!そんな方いらしゃると思います.
というわけで,今回は大学の授業と院試勉強の橋渡しをしてくれる参考書を紹介します.
工業数学を網羅するまさにバイブル
はい,コレ!
この参考書は,微分方程式・線形代数・複素関数論・ベクトル解析・フーリエ変換・ラプラス変換について基礎を中心に例題を交えながら解説しています.
つまりこれ一冊で東京大学の工学系における数学のテスト範囲をほぼ復習可能です.(確率論だけはノーマークですが)
院試勉強を始めたばかりで右も左もわからず,とにかく数学の全体の見通しを立てたいと思っていた私にはぴったりな参考書でした.
ページ数は400ページほどで各分野を40~50ページほどで解説しています.授業の復習を全くしていなかったせいで院試の勉強を始めた時点では大学三年分の数学がすっかり抜けきっていましたが,それでもふんふんと読み進めることができた上,途中で出てくる定理や公式は証明も併記しているのでもやもやすることもありませんでした.
一方で,四力問題精選と同じですがこちらも膨大な範囲をコンパクトにまとめているため,どうしても広く浅くという印象を持ってしまいます.
まとめますと,この参考書は院試における数学の見通しを立てたい,大学三年分の総復習をしたいという方におすすめです.
一方で,これはあくまで大学授業と院試のギャップを埋めるための参考書であり,数学で他の学生に差をつけるなら他の参考書や問題集が必要だというのが正直なところです.
とはいっても,線形代数や複素関数論など分野によっては院試に十分な知識を得られるものもありますので,手にして損はないと思います.
下に各分野の内容を大まかに載せておきます.
- 第一章 線形代数
出だしは行列の和や積などの解説からスタート.前半のメイントピックは行列式の性質であり,後半では固有値問題を解説する.行列式の性質では院試で役に立つ余因子展開などについても解説している.院試において知ってて当然とされる転置や行列式の性質などもほぼ網羅.線形代数に関してはこの一冊だけでも十分院試で戦える.
- 第二章 ベクトル
ベクトル解析の基礎がメイン.発散や勾配,回転などの大学院試で必須となる内容を解説.ガウスの発散定理やストークスの定理などもわかりやすく解説しているので数学にとどまらず流体力学や電磁気などの勉強にも役立った.
- 第三章 常微分方程式
偏微分方程式の解法は第五章でフーリエ変換とあわせて解説するため,この章では常微分方程式の解法のみを取り扱う.常微分方程式には様々な型がありそれに応じた解法があるが,とりあえず定番のものには触れているもののこれだけでは院試で高得点は狙えないように思う.別の参考書で補う必要あり.
- 第四章 複素関数論
複素数の基礎から複素積分までの解説が全体の八割を占め,残りの二割で写像の解説を行う.複素積分までの解説はかなり実践的なので,これだけでも院試の問題はある程度解ける.コーシーの積分定理や留数定理など院試の問題を解くにあたって必要な知識はすべて載っている.(写像は捨てていたので申し訳ないが何とも言えない)
- 第五章 フーリエ変換
フーリエ級数の基礎から解説するので授業などでフーリエ変換を習ってなくても特に問題なし.解説はわかりやすい.東大でよく出題されるフーリエ変換の各種性質なども丁寧に証明付きで載っている.特に畳込み積分のフーリエ変換の証明は過去に何回も出題されているので要チェック.フーリエ級数に関連して偏微分方程式にも触れているが,こちらも解説が丁寧なので解答の流れはつかむことができるはず.
- 第六章 ラプラス変換
フーリエ変換同様,ラプラス変換の性質について証明付きで解説している.ただそれ以外の印象は薄い.
私が院試を通じてお世話になった参考書ですが,一通り学習を終えた時の正直な感想を含めてレビューしてみました.
この参考書の良いところは膨大な試験範囲をこれ一冊で見渡せるところです.
全体が見渡せれば自分の弱点も見えてくるでしょうから,そういう意味で”なにがわからないのかわからない”という方の強い味方になってくれると思います.
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